各国の特許制度
ヨーロッパの特許制度
パリ優先ルート、PCTルートのいずれもが利用可能です。
ヨーロッパ特許条約(EPC)に基づいてされる出願です。
ヨーロッパ特許庁(EPO)に特許出願をして特許が認められると、EPC加盟国で特許を受けたことになります。
ただし、特許を取得する段階で権利取得する国の言語の翻訳文を提出する必要があります。
例えば、イタリアで権利取得する場合にはイタリア語の翻訳文を提出する必要があります。 EPCルートが利用できる国は、下記のEPCの加盟国と拡大適用国です(2008年5月15日現在)。
日本企業が良く出願する国はすべて加盟国に入っています。
【締約国:34カ国】(自動指定されます)
オーストリア、ベルギー、ブルガリア、スイス、キプロス、 チェコ、
ドイツ、デンマーク、エストニア、スペイン、 フィンランド、
フランス、
イギリス、ギリシャ、クロアチア、ハンガリー、アイルランド、アイスランド、
イタリア、リヒテンシュタイン、リトアニア、 ルクセンブルク、ラトビア、モナコ、マルタ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、 ポルトガル、ルーマニア、
スウェーデン、スロベニア、スロバキア、 トルコ
【拡大適用国:4カ国】(出願人が指定する必要があります)
アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マケドニア旧ユーゴスラビア共和国、セルビア なお、ヨーロッパの各国へ直接、特許出願することも可能です。
従いまして、ヨーロッパに出願する場合には、
(1)パリ優先ルートからEPC出願
(2)PCTルートからEPC出願へ移行
(3)パリ優先ルートから各国直接出願
(4)PCTルートから各国出願へ移行
という4通りの出願方法があります。
【パリ優先権を主張してEPC出願する場合の流れ】
◆出願の言語 |
EPOの公用語:英語、ドイツ語又はフランス語で出願します。 ただし、他の言語、例えば日本語で出願し2ヵ月以内に公用語の翻訳文を提出する方法も認められています。 |
◆国の指定 |
出願時に全締約国を指定したと自動的にみなされます。ただし、拡大適用国は、出願時に指定する必要があります。 |
◆出願公開 |
優先日より1年6ヵ月経過後に出願内容が公開されます。 |
◆サーチレポート |
出願をすると、EPOが先行技術調査を行い、出願から1年6ヶ月~2年くらいの間に、調査結果のサーチレポートを出願人に通知してくれます。出願人は、サーチレポートを見て必要があれば、審査請求をする前でも出願内容の補正を行うことができます。 |
◆出願審査請求制度 |
サーチレポート公開後6ヶ月以内にEPOに審査請求をする必要があります。審査請求を行わないと、出願が取り下げられたとみなされます。 |
◆出願更新料 |
特許付与前でも、出願を維持するために、Renewal Fee(更新手数料)を支払う必要があります。Renewal Feeは、出願日から起算して3年目及びその後の各年毎にEPOに納付します。 |
◆セルフコリジョンに注意 |
類似した発明について複数の出願を前後して提出した場合、「拡大された先願の地位」によって、自己の後願が自己の先願によって拒絶される場合(セルフコリジョン)があることに、注意しなければなりません。 |
◆特許付与手続き |
・審査にパスすると特許付与通知を受けます。特許付与通知の受領日から3か月以内に、所定の料金の納付と、出願言語以外の2つのEPO公用語への請求の範囲の翻訳文(英語で出願したならば、フランス語とドイツ語)を提出すると、特許が公告され、公告日から各指定国の国内特許と同等効力の欧州特許が付与されます。 ・公告日から9ヶ月は、第三者による異議申し立て期間になります。 |
◆国内移行手続 |
・特許付与(特許公告)日から3ヶ月以内に、その国の公用語への明細書等全文の翻訳文を、その国の特許庁に提出すること(国内移行手続き)が必要です。未提出の場合は、その国では欧州特許は初めから無かったものとみなされます。 ※出願言語がその国の公用語と一致している場合は、この翻訳文提出は不要です。 さらに、ロンドンアグリーメント(下記参照)の適用国でも、翻訳文提出が不要又は軽減されます。 |
◆欧州特許権の 存続期間 |
EPC出願日から20年です。 |
【法改正】
1.EPC2000
EPCの2000年改正(EPC2000)が2007年12月13日に発行した行されました。ポイントは以下の点にあります。
(1)日本語でEPC出願が可能になりました。米国、日本と同じ扱いになりました。
(2)全指定制度
※出願時に指定国を決める必要はなくなりました。PCTと同様の制度で、全締約国を指定したものとみなしております。
(3)出願時に「請求の範囲」がなくとも、出願日の認定がされます。
2. ロンドンアグリーメント
下記の締約国間で締結された合意(ロンドンアグリーメント)が2008年5月1日に発効しました。
この合意は、下記の締約国にのみ適用されます。ポイントは以下の点にあります。
(1)英語、ドイツ語、フランス語:EPO公用語がその国の公用語である指定国への国内移行手続きでは、その国の公用語への明細書等全文の翻訳文の提出は不要です。
(2)EPO公用語がその国の公用語ではない指定国への国内移行手続きでも、その国の公用語への明細書等全文の翻訳文は不要ですが、請求の範囲の翻訳文を提出する必要があり得ます。
【合意の適用国】
デンマーク、フランス、ドイツ、アイスランド、ラトビア、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク、モナコ、オランダ、スウェーデン、スイス、イギリス